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東京地方裁判所 昭和51年(行ウ)42号 判決 1976年10月15日

原告

(マサチユーシツツ州)デニスン、

マニユフアクチユアリング、カムパニ

右代表者

ヘンリ、アー、ルーイス

右訴訟代理人

登録管理人弁理士

中島宣彦

被告

特許庁長官

片山石郎

右指定代理人

成田信子

外三名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一  当事者の申立

一、原告

1  被告が原告に対し、昭和四八年実用新案登録願第一〇〇二五号について、昭和五〇年四月一一日付でした出願無効処分を取り消す。

2  被告が原告に対し、右実用新案登録出願無効処分に関する昭和五〇年七月二一日付行政不服審査法による異議申立てについて、同年一二月八日付でした異議申立棄却の決定を取り消す。

3  訴訟費用は、被告の負担とする。

二、被告

1  主文同旨。

第二  原告の請求原因

一、被告のした処分

被告は、昭和五〇年四月一一日付で、原告に対し、原告の昭和四八年実用新案登録願第一〇〇二五号(以下「本件出願」という。)について、第一年から第三年までの各年分の登録料の納付期間内に右登録料を納付しなかつたことを理由に実用新案法第五五条第二項、特許法第一八条第一項の規定に基づき、本件出願を無効とする旨の処分(以下「本件処分」という。)をし、その謄本は、同年五月二一日、原告に送達された。

そこで原告は、昭和五〇年七月一九日、本件処分について、被告に対し、行政不服審査法による異議申立てをしたところ、被告は、同年一二月八日付で、本件処分を正当として、右異議申立てを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)をし、右決定書謄本は、同年一二月一〇日、原告に送達された。

<以下略>

理由

一被告が原告に対し、昭和五〇年四月一一日付で本件処分をし、その謄本が同年五月二一日原告に送達されたこと、原告が被告に対し、同年七月一九日、行政不服審査法による異議申立てをしたところ、被告が同年一二月八日付で本件決定をし、右決定書謄本が同年一二月一〇日、原告に送達されたことは、いずれも当事者間に争いがない。

二原告は、実用新案法第三二条第一項、同法第五五条第二項で準用する特許法第一八条第二項が単なる注意規定にすぎない旨主張するので、検討するのに、実用新案法第三二条第一項は、実用新案権の設定の登録を受ける者に対し、一定の登録料を定められた納付期限内に納付すべき法律上の義務を定めた規定であり、これに対応して同法第五五条第二項、特許法第一八条第一項は、右実用新案権の設定の登録を受ける者が、右納付期間内に登録料を納付しないときは、被告に当該実用新案登録出願手続を無効にすることができる権限を付与した規定であることは、右各規定の文言に徴し、明らかであつて、右各規定が原告の主張するような単なる注意規定であると解することはできない。したがつて、原告の右主張は、理由がない。

ところで、原告が、本件出願について、第一年から第三年までの各年分の登録料を納付期間内に納付しなかつたことは、原告の自認するところであるから、被告が実用新案法第五五条第二項、特許法第一八条第一項に基づいて、本件処分をしたことは適法といわなければならない。

なお、原告は、本件出願について、第一年から第三年までの各年分の登録料を、その納付期間経過後に納付したから、被告において、実用新案法第一条の精神から右納付を正当と認め、本件処分を撤回すべき旨主張するところ、仮に原告が右のように登録料を納付したものであるとしても、前説示のとおり、実用新案法第五五条第二項、特許法第一八条第一項は単なる注意規定ではないところ、実用新案法第一条の精神をもつて、本件処分を撤回すべき根拠と解することはできない。したがつて、原告の右主張は、理由がない。

三してみれば、本件処分及び本件決定を違法として、その取消を求める原告の本訴請求は、失当として、棄却されるべきであるから、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(佐藤栄一 木原幹郎 塚田渥)

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